知的財産戦略本部は、「 安定的なモノの供給が市場を牽引する20世紀型の工業モデルの時代から、体験や共感を求めるユーザの多様な価値観が市場を牽引する時代へと変化する中、市場を牽引する力の源泉となる無形資産が果たす役割は増大している」として、「 知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」を開催。その結果を「財のビジネス価値評価検討タスクフォース報告書〜経営をデザインする〜」として発表。このページには、同報告書の内容を24回に分けて掲載する。11/24
第2章 価値創造メカニズムの把握とデザイン-6
第3節 知財戦略は全社・事業との関係において策定
本節では、ビジネスモデルを支える経営資源としての知財の戦略について説明する。第1章1節で触れたように、21 世紀型モデルの下では、知財は、経営資源の一部として企業又は事業の価値創造メカニズムの中で活用されることが求められる。したがって、企業又は事業の価値創造メカニズムに適合するように、知財の創出、調達、活用又は転用等の戦略を策定することが必要である。また、その逆に、自社又は他者(大学・研究機関等を含む)が保有・利用する知財の情勢に適合するように、企業又は事業の価値創造メカニズムをデザインすることも必要である。近年では、知財の情勢に、さらに市場の情勢を加味して、企業又は事業の価値創造メカニズムをデザインする試み(「IPランドスケープ」と称される。)も注目されている。
本章第1節及び第2節では、企業又は事業の価値創造メカニズムをデザインする方法について扱った。本節では、知財戦略を策定する方法について扱う。
知財は複数の事業に跨って使用することも可能な資源であるため、全社・事業戦略と外部環境を踏まえ、全社レベル・事業レベルの両視点から知財の確保・強化・活用の戦略を策定することが望ましい。事業視点では、将来のビジネスモデルにおいて知財をどのように活用するか、将来のビジネスモデルを支える知財をどのように確保・強化するかを検討する。全社視点では、保有する知財を経営で最大限活用することを目指し、一の事業の知財が他の事業に活用・転用可能であるかのみならず、企業の成長力の向上やエコシステムの形成に知財をいかに活用するか等を検討する。以下では、知財ポートフォリオをマネジメントすることによる知財の確保・強化に向けた戦略の策定について説明し、さらに、オープン化・クローズ化を意識した知財の活用戦略の策定についても説明する。
第1項 知財ポートフォリオをマネジメント
知財戦略の策定にあたっては、自社や他社が保有する知財の全体像やそれらの相互関係を把握することを通じて、自社が確保・強化すべき知財(技術等)と、見直すべき知財(技術等)を判別することが求められている。以下、具体的な方法について説明する。
(@)自社・他社の知財ポートフォリオの分析を通じた知財戦略の策定
自社・他社の知財ポートフォリオの分析では、自社の現状、他社の動向、自社と他社の関係性(自社と競合他社とのパワーバランス等)を分析する。その際、産業分野を超えて新しい価値を生み出すチャンスの認識と、異分野からの参入の脅威への対応という観点から、現在の競合のみならず、幅広く各社の動向を把握することが重要である。
自社・他社の知財ポートフォリオのうち、特に、自社と他社との技術の関係性を把握する方法として、特許情報に基づき技術動向を俯瞰する方法が知られている。技術動向を俯瞰することで、自社・他社の強みや弱み、技術のどこに穴があるかを把握したり、新たな競合の出現を予測したり、ビジネスパートナーの発見に活用したりすることができる。
また、技術動向の俯瞰は、M&Aをした際のシナジー効果の予測にも活用することもできる。例えば、分野が完全に重なっている場合はシナジー効果を発揮する可能性が低いのに対し、分野がある程度重複しているが重なっていない領域が比較的多い場合は、お互いの強みを生かすことができ、シナジー効果を発揮する可能性が高いと考えられる。
自社・他社の知財ポートフォリオの分析に基づき、全社戦略・事業戦略を踏まえてどのような知財を確保・強化すべきか、また、確保・強化すべき知財を、自社で創出するか、他者から獲得するかについても検討することが重要である。