知的財産権をめぐる話題
このページには、特許権などの産業財産権や産業財産権に著作権や育成権などを含めた知的財産権に関する話題を掲載します。

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 2025〜2030年ごろを見すえた新たな知的財産戦略ビジョン


 知的財産戦略本部は、2025〜2030年ごろを見すえた新たな「知的財産戦略ビジョン」を策定した。同ビジョンでは、(1)これからの時代に対応した人材・ビジネスを育てる、(2)挑戦・創造活動を促す、(3)新たな分野の仕組みをデザインする――を重点事項として挙げ、(3)の中で、コンテンツ創造へのAI・ブロックチェーン活用を掲げている。このページには〜「価値デザイン社会」を目指して〜との副題のついた「知的財産戦略ビジョン」の内容を24回に分けて掲載する5/24

第1.将来の社会変化につながると考えられる現在の環境変化や兆候-3
2.新技術の進展と浸透
 最近の新技術の進展や浸透のスピードとバラエティは目を見張るものがある。例を挙げれば、「IoT」、「ビッグデータ」、「人工知能(AI)」、「ブロックチェーン技術」、「3Dプリンタとファブレス生産」、「仮想現実(VR)/拡張現実(AR)」、「量子コンピューティング」、「5G」、「ゲノム編集技術」など、枚挙にいとまがない。
 海外発の新技術が目立つ一方で、日本の新技術を生み出す科学研究力に陰りがあるとの指摘がある。例えば、科学研究力の量的観点である総論文数や質的観点である被引用上位論文数については、欧米先進諸国、中国・韓国がその数を大きく伸ばす中、我が国は伸び悩んでおり、相対的な地位の低下がみられる。高等教育と研究の拠点である大学については、国際性に対する評価などが高いとは言えず、その結果として、世界大学ランキングにおける我が国の大学の順位が伸び悩んでいる。博士号取得者数も、先進国で日本だけが減少し、差が開いている。日米トップ3大学の常勤教授の平均年収も差が年々広がっている。各国の科学技術予算は、日本が約20年間足踏みを続けているのに対し、米中は増加を続け、差は大きく開いている。米国の巨大IT企業の研究開発投資は100億ドル超に達し、日本企業との差が開いている。日本の先端IT人材の不足も指摘されている。
 歴史的な技術革新期において知財創出力を高めるためのリソース投下が十分に出来ていないことが、我が国の知財創出力減退の大きな背景の一つにあるのではないかとの懸念がある。このままでは、我が国の知財創出力はさらに低下し、優秀な人材(学生も研究者も)を国内に招へいできないばかりか、人材の国外流出が危惧されることになりかねない。
(新技術及びその組合せによるイノベーションの加速)
 これらの新技術とその周辺技術はそれぞれ新しい製品やサービスを生み出している。しかし、より重要なのは、これら新技術が社会全体に浸透することにより、分野を超えて組み合わされて活用されつつある点である。例えば、「IoT」や「ビッグデータ」「人工知能」によるデータ分析を従来産業と組み合わせることにより、新しいビジネスを生み出すといったことが、ものづくりの生産現場や医療・ヘルスケア産業、農業などあらゆる分野で加速度的に進みつつある。さらに、グローバル企業においては、ユーザーが生み出す膨大なデータを解析して新しい価値を予想し提供していくことが大きなビジネスチャンスになりつつある。また、人工知能(AI)、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)技術やブロックチェーン技術の実用化はまだ端緒についたばかりであり、社会の様々な場面でさらに新技術が融合し、需要者のニーズデータと結びついて浸透すれば、あらゆる産業が大きく変容していくことが見込まれる。
(サイバー空間の増大とリアル空間との融合)
 新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れてイノベーションを創出し、一人一人のニーズに合わせる形で社会的課題を解決する新たな社会として2016年に提唱された「Society5.0」への取組が、産業界も含め様々な分野において加速している。ここでは、「サイバー」の占める割合が増大するとともに、さらに「リアル」と「サイバー」の結びつきが強化され、それを通じてデータを媒介にした異業種同士や供給者と顧客の直接の結びつきが加速される。


 知的財産推進計画2018

 知的財産戦略本部は、〜旧ビジョンの成果を起点に、プロイノベーション戦略の考えを軸として、新たな知財ビジョン(価値デザイン社会)の実現へ〜に向けた、「人・ビジネスを育てる」、「挑戦・創造活動を促す」、「新たな分野の仕組みをデザインする」の三つの重点事項を含む「知的財産推進計画2018」を発表した。このページには「知的財産推進計画2018」の内容を19回に分けて掲載する5/19

2.「知的財産推進計画2018」重点事項
(1)これからの時代に対応した人材・ビジネスを育てる
 産業の供給力が需要を上回り、需要者の多様な価値観が市場を牽引する時代には、イノベーション創出の過程や価値創造の在り方そのものが変化する。そこでは、新たな知的財産を生み出すことや、アイデアをはじめとする自らのリソースと他人の持つリソースを適切に組み合わせ、価値を生む/高める仕組みを工夫することが極めて重要である。特に、需要サイドを理解した企業の価値創造のメカニズムのデザインがあらゆる分野における成長の核心となるため、大企業から地方・中小企業、また農林水産業などの分野に至るまで、このような考え方を普及させる必要がある。  その大きなデザインの下、企業その他の経済活動体は、具体的なビジネスモデルの中で知財を適切に把握してその価値を評価し、ビジネスにおける資源の一つとして活用していくことが求められる。すなわち、知財価値評価のツールを整備・普及するとともに、デザイン力を持つ人材育成のため、知財創造・活用能力の育成を小学校段階から行うことが必要である。
 さらに、我が国には、外国人が魅力を感じる「クールジャパン」として価値を発揮し得る資源が、全国にあまた存在する。こうした魅力を外国人に効果的に訴求する商品・サービス等として創造・展開する人材の育成や、地域資源等の発掘・編集を通じて、海外展開や地域の活性化をリード・サポートする外国人材の集積も行う必要がある。

@ 知財のビジネス上の価値評価
(現状と課題)
 モノの供給力が需要を上回ることにより、ユーザーの多様な価値観に選択されるコト・サービスの価値が急速に高まる。そのため、企業においては、モノの製造を行う有形資産に比べて、ユーザーニーズやウォンツを喚起し、それらに訴求するようにデザインされた価値創造メカニズム、それらに接近するためのデータ等の知財に代表される無形資産の果たす重要性が相対的に増すことになる。
 また、従来、実務の現場では、知財の価値評価は、知財を取引対象や金融資産と捉えて資金調達を行ったり、事業売買を行ったりする際におこなうものと捉えられてきた。そのため、ビジネスにおいて知財が果たす役割を把握し、その価値を評価するという考え方は必ずしも十分には浸透してこなかった。
 そこで、ビジネスにおける知財の価値を適切に把握し、知財がビジネスの中で有効に活用される状況を作っていくため、知財のビジネス価値評価検討タスクフォースにおいて、企業の価値創造のメカニズムと知財の関係を見える化し適正に評価することを可能とする「経営デザインシート」を作成したところである。今後は、経営デザインシートを活用することで、企業が自社、他社の資源を適切に組み合わせて新たな価値を生み出す仕組みをデザイン(構想)していくとともに、金融の円滑化が促進されることが期待される。
(施策の方向性)
・ 知的資産経営報告書、統合報告、ローカルベンチマーク等コミュニケーションツールを普及する際に知財のビジネス価値評価検討タスクフォースの考え方を広めていくとともに、金融機関が行っている事業性評価の取組においてもその考え方が導入されるよう促し、それらの状況に基づいて経営デザインシートの見直し等の必要な検討を行う。(短期、中期)(経済産業省、金融庁、内閣府)
・ 知的資産プラットフォームに格納する情報として経営デザインシートの活用を検討する。(短期、中期)(内閣府)

A デザイン経営によるイノベーション創出及びブランド構築の促進
(現状と課題)
特許庁と経済産業省の下、2017 年7月に「産業競争力とデザインを考える研究会」を設置し、デザインによる我が国産業の競争力強化に向けた課題を整理し、その対応の検討を行ったところである。
当該研究会の検討においては、デザイン力を重要な経営資源として活用し、製品・サービス・ビジネスのイノベーションを創出する力及びブランド構築を可能とする力を向上させる「デザイン経営」の重要性が確認された。今後は、企業がデザイン経営を実践することを促すことで、我が国産業の競争力強化につながるような取組を行っていくことが求められる。
(施策の方向性)
・ IoT、AI、ビッグデータ等の新技術による社会変革(イノベーション)を促進する「デザイン経営」の奨励及びブランド形成に資するデザインの保護等、「デザイン経営」に資する制度の整備等の観点から、意匠制度をはじめ他の知的財産権制度の在り方について検討し、その結果を踏まえて、法改正を含めた必要な措置を講ずる。 (短期、中期)(経済産業省)
・ デザイン経営を取り入れて成功している企業の具体的な事例について、企業規模や業種別に取りまとめた事例集を作成し、経営者へのデザイン経営の重要性の普及啓発を行うとともに、デザイン経営を奨励する方策について検討を行う。 (短期、中期)(経済産業省)



 知財のビジネス価値評価検討タスクフォース報告書〜経営をデザインする〜

 知的財産戦略本部は、「 安定的なモノの供給が市場を牽引する20世紀型の工業モデルの時代から、体験や共感を求めるユーザの多様な価値観が市場を牽引する時代へと変化する中、市場を牽引する力の源泉となる無形資産が果たす役割は増大している」として、「 知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」を開催。その結果を「財のビジネス価値評価検討タスクフォース報告書〜経営をデザインする〜」として発表。このページには、同報告書の内容を24回に分けて掲載する。5/24

第1章 社会・経済環境の変化と企業戦略(20 世紀型モデルから21 世紀型モデルへ)-3
第3項 21世紀型モデルとそのモデルの下での企業戦略 -2
(A)「デザイン思考」の経営が適合的
ユーザが主導権を握る状況の下では、いかにユーザ志向を実現できるか、すなわち、ユーザの価値観をすくい取り、その変化に機敏に対応できるかが企業経営において重要になる。したがって、企業には、ユーザの利用データやニーズ情報を分析し、ウォンツを探求して、それを満たしていくようなビジネスをデザインしていくことが重要になり、それが21世紀型モデルにおいてイノベーションを生み出す鍵になる。また、ウォンツの探求においては、経済的価値のみならず、社会的価値へのユーザの関心も考慮する必要があり、より長期的・統合的視座が必要である。
さらに、企業においては、個々の事業のビジネスのデザインに基づくイノベーションの追求に加え、変化の速い市場において、事業ポートフォリオを絶えず見直していくことが重要である。変化を厭わない組織を作り、予期せぬ環境変化にも常に自己を適合させ続けられるように、企業のビジネス全体をデザインすることが、企業自体の持続可能性に重要な意味を持つことになるからである。
こうした企業の戦略を策定するには、統合的な視座で考えるデザイン思考や、自らの変化を受容し、挑戦を奨励する革新的な企業風土が適合的である。経営層や従業員のイノベーションの追求やデザイン思考が促進されるような価値観・企業風土を醸成するためには、例えばいわゆる15%ルールの導入等の制度作りや多様な交流の場の形成、人材の確保等の取組も重要であるとの指摘もある。

(B)「プロイノベーション」が知財戦略の中心
需要側にとって、モノよりコト・サービスがより大きなウェイトを占める時代にあっては、無形資産は市場牽引力の源泉としての重要性を増し、単に技術を権利化して知財として管理していればよいわけではなくなる。知財を経営戦略資源の一部とし、企業戦略に従いつつ、知財を戦略的・積極的に活用してイノベーションにつなげることが重要となる。
すなわち、知財を管理するという発想ではなく、イノベーションを生むために知財を活用することを重視した、「プロイノベーション」の発想が必要になる。



 リンク集

 WIPO
国連の世界知的所有権機関のホームページです。
 特許庁
特許庁のホームページです。
 経済産業省
経済産業省のホームページです。
 最高裁判所
最高裁判所のホームページです。
 知的財産戦略本部
知的財産戦略本部のホームページです。
 文化庁
文化庁のホームページです。
 輸入差止情報
税関の輸入差止情報のホームページです。
 仲裁センター
日本知的財産仲裁センターのホームページです。


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