知的財産権をめぐる話題
このページには、特許権などの産業財産権や産業財産権に著作権や育成権などを含めた知的財産権に関する話題を掲載します。

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 2025〜2030年ごろを見すえた新たな知的財産戦略ビジョン


 知的財産戦略本部は、2025〜2030年ごろを見すえた新たな「知的財産戦略ビジョン」を策定した。同ビジョンでは、(1)これからの時代に対応した人材・ビジネスを育てる、(2)挑戦・創造活動を促す、(3)新たな分野の仕組みをデザインする――を重点事項として挙げ、(3)の中で、コンテンツ創造へのAI・ブロックチェーン活用を掲げている。このページには〜「価値デザイン社会」を目指して〜との副題のついた「知的財産戦略ビジョン」の内容を24回に分けて掲載する。11/24

第2.現在の兆候から予測される将来の社会像〜人が幸せになる未来を作ろう〜-4
4.「未来」の相反性(人々が幸せを感じる未来になっているか?)
技術の進展に代表される様々な変化は、基本的に社会の利便性、効率性を高め、人々の生活をより豊かにするものと考えられるが、それらによって本当に人々が幸せを感じる社会になっているのかという観点から、利便性や効率性の向上だけではない価値についても検討することを忘れてはならない。
 例えば、SNSなどで常に他の人とつながっており様々な利便を享受できるようになる一方、時にはそのつながりから解放されたいという欲求もあるのではないか。インターネットですぐに検索できることは便利であるが、一方で、利便性を越え、考えて探して辿り着く喜びもあり、デジタル時代だからこその知的な探索・散策の有する価値の再評価も必要ではないか。働き方、生き方から毎日の消費に至るまで、多様性の提供が実現した社会では、多数の選択肢から選択する自由を得られるが、一方で、あらゆることに選択肢が増えることの煩雑さを感じ、選択できることを好まない人が一定数存在するのではないか(自由にメニューの組合せを選択できる「カフェテリア方式」を好む人もいれば、予めメニューの組合せが決まっており一つ一つ選択する必要のない「幕の内弁当方式」を好む人もいる。)。
 また、科学や社会システムが発達するにつれ巨大化・複雑化・ブラックボックス化することにより、物質的に豊かになったとしても、疎外感や不安感を感じる人もいるし、これまでのような科学技術主導のイノベーションだけに価値があるわけではないという人も出てくるのではないか。
 これらは、国、会社、家族などの包摂力が弱まるときに、さらに顕著になると考えられ、そのために個々人の帰属欲求をどう満たすのかについてのソリューションが必要となる。イノベーションに伴って技術的には実現可能となった監視社会や生命操作、フェイクニュースによる洗脳等の事象について、その捉え方や対応について真剣に対峙し議論をしなければならない。極端な例では、サイバー空間で人を模した自律的存在(ボット)などでは、「人」の概念が捉えなおされる可能性すらある。
 さらには、このような新しい技術やシステムを使いこなすことで富を集め、その富で技術やシステムを高度化しさらに富を得るというように富裕になる層が現れる一方、そのような技術やシステムを使いこなせないため富を得ず、それゆえさらに技術やシステムから遠のいてしまう層も現れ、これらの二極化が加速される可能性があり、富の再分配はますます大きな課題となりうる。また、都市中心型社会の進展する中、中心となる都市と中心から離れた地方の分断や、都市への人材の偏在化という現象がさらに進む可能性がある。全てが機械化・自動化された技術支配の世界になるか、主体的に技術を活用して都市と田舎の相互交流を確保し、自然とも共存しつつ都市にもアクセスできる社会になるかという選択の分岐点が今現在だと言えるのかもしれない。
 このような相反性があるということを認識しながら、多様な価値観に基づき幸せを感じることができる人がより多くなる未来を主体的に作ろうとする姿勢が大切となっている。


 知的財産推進計画2020

 知的財産戦略本部は、新型コロナ後のニュー・ノーマルの下で「脱平均」、「融合」、「共感」及び「デジタル革新」を進めるために必要な政策について、基本的な方針を示す「『ニュー・ノーマル』と知財戦略」(総論的部分)と、各分野において講ずべき施策を示す「イノベーションエコシステムにおける戦略的な知財活用の推進」、「CJ戦略の実行」及び「コンテンツ・クリエーション・エコシステムの構築」とに整理し、「知的財産推進計画2020」を取りまとめた。このページには同計画の内容を39回に分けて掲載する。22/39

3.イノベーションエコシステムにおける戦略的な知財活用の推進
(8)知財の戦略的な活用と社会実装に向けた環境整備
(施策の方向性)−2
・ AI・IoT技術の進展に伴い、様々なビジネスモデルが登場し、新たな紛争処理や権利保護のニーズ等が高まり、さらに、オープンイノベーションの進展によりスタートアップ等の役割が高まっている。このような状況を踏まえて、AI・IoT技術の時代にふさわしい、紛争解決機能の強化を含む特許制度の在り方を検討し、必要な施策を講じる。(短期・中期)(経済産業省)【再掲】
・ 中国、韓国及びASEAN諸国を含むアジア地域の司法関係者と知財関係紛争をテーマとする国際会議やそのフォローアップ等を目的とするセミナーを開催し、アジア地域全体の紛争処理能力の向上を図ることに加え、欧米諸国の司法関係者とも知財関係紛争をテーマとする国際会議を開催し、知財紛争処理の国際的連携を図り、さらに、我が国の法曹関係者や海外進出を行う民間企業等に知財関係紛争の解決に関する情報を提供する。(短期、中期)(法務省、経済産業省)
・ 知的財産に関する事件を含む国際仲裁の活性化に向け、2019年度から開始した調査委託事業その他関係府省の取組において、人材育成、企業等に対する広報・意識啓発、施設の整備等の各施策を包括パッケージとして引き続き実施する。(短期、中期)(法務省、関係府省)
・ 知財紛争等の当事者がその解決を図るのにふさわしい紛争解決手続を容易かつ安心して選択・利用できるよう、ADR認証申請に係る審査を適正に処理するとともに、認証ADR(愛称:かいけつサポート)の情報等に関する周知・広報や認証ADR事業者と関係機関との連携の円滑化等の取組を進めることにより、ADRの一層の拡充及び活性化を図る。(短期、中期)(法務省)
・ 地方における知財専門家へのアクセスを支援するため、関係団体と連携し、地方においても知財紛争処理に精通した専門家に依頼できるような体制の充実を図る。(短期、中期)(法務省)【再掲】
・ 主要な知財関係裁判例や令和元年10月に運用が開始された知財調停制度など我が国の知財紛争処理に関する情報について、海外への情報発信の充実を引き続き期待する。
・ 我が国の企業が知的財産を武器とした国際的な事業展開を円滑に行えるビジネス環境を整備するため、我が国の知財関係等のニーズが高い法分野に関する法令及びその関連情報(法改正の概要情報等)の高品質な英訳情報提供の拡充に向け、法改正等に即応した迅速な翻訳のための体制整備(機械翻訳の活用に向けた調査検討を含む。)と利便性の高い利用環境整備を推進し、より効果的・積極的に海外発信する。(短期、中期)(法務省)
・ 我が国企業等が直面する知財を含む国際紛争の解決の円滑化のため、外国法事務弁護士等による国際仲裁・国際調停代理の範囲拡大・拡充を図り、これらの手続にも一貫して代理することができるための措置等を速やかに講ずる。(短期、中期)(法務省)
・ 成長著しいASEAN地域などの新興国等における知的財産の権利行使に関する法制度の整備と運用を支援するとともに、効果的な司法手続を確立するため、新興国等の司法関係者等に対して研修を行うなど、知財司法人材の育成を支援する。(短期・中期)(法務省、外務省)



 知財のビジネス価値評価検討タスクフォース報告書〜経営をデザインする〜

  知的財産戦略本部は、「 安定的なモノの供給が市場を牽引する20世紀型の工業モデルの時代から、体験や共感を求めるユーザの多様な価値観が市場を牽引する時代へと変化する中、市場を牽引する力の源泉となる無形資産が果たす役割は増大している」として、「 知財のビジネス価値評価検討タスクフォース」を開催。その結果を「財のビジネス価値評価検討タスクフォース報告書〜経営をデザインする〜」として発表。このページには、同報告書の内容を24回に分けて掲載する。11/24

第2章 価値創造メカニズムの把握とデザイン-6
第3節 知財戦略は全社・事業との関係において策定
本節では、ビジネスモデルを支える経営資源としての知財の戦略について説明する。第1章1節で触れたように、21 世紀型モデルの下では、知財は、経営資源の一部として企業又は事業の価値創造メカニズムの中で活用されることが求められる。したがって、企業又は事業の価値創造メカニズムに適合するように、知財の創出、調達、活用又は転用等の戦略を策定することが必要である。また、その逆に、自社又は他者(大学・研究機関等を含む)が保有・利用する知財の情勢に適合するように、企業又は事業の価値創造メカニズムをデザインすることも必要である。近年では、知財の情勢に、さらに市場の情勢を加味して、企業又は事業の価値創造メカニズムをデザインする試み(「IPランドスケープ」と称される。)も注目されている。
 本章第1節及び第2節では、企業又は事業の価値創造メカニズムをデザインする方法について扱った。本節では、知財戦略を策定する方法について扱う。
知財は複数の事業に跨って使用することも可能な資源であるため、全社・事業戦略と外部環境を踏まえ、全社レベル・事業レベルの両視点から知財の確保・強化・活用の戦略を策定することが望ましい。事業視点では、将来のビジネスモデルにおいて知財をどのように活用するか、将来のビジネスモデルを支える知財をどのように確保・強化するかを検討する。全社視点では、保有する知財を経営で最大限活用することを目指し、一の事業の知財が他の事業に活用・転用可能であるかのみならず、企業の成長力の向上やエコシステムの形成に知財をいかに活用するか等を検討する。以下では、知財ポートフォリオをマネジメントすることによる知財の確保・強化に向けた戦略の策定について説明し、さらに、オープン化・クローズ化を意識した知財の活用戦略の策定についても説明する。

第1項 知財ポートフォリオをマネジメント
知財戦略の策定にあたっては、自社や他社が保有する知財の全体像やそれらの相互関係を把握することを通じて、自社が確保・強化すべき知財(技術等)と、見直すべき知財(技術等)を判別することが求められている。以下、具体的な方法について説明する。
(@)自社・他社の知財ポートフォリオの分析を通じた知財戦略の策定
自社・他社の知財ポートフォリオの分析では、自社の現状、他社の動向、自社と他社の関係性(自社と競合他社とのパワーバランス等)を分析する。その際、産業分野を超えて新しい価値を生み出すチャンスの認識と、異分野からの参入の脅威への対応という観点から、現在の競合のみならず、幅広く各社の動向を把握することが重要である。
自社・他社の知財ポートフォリオのうち、特に、自社と他社との技術の関係性を把握する方法として、特許情報に基づき技術動向を俯瞰する方法が知られている。技術動向を俯瞰することで、自社・他社の強みや弱み、技術のどこに穴があるかを把握したり、新たな競合の出現を予測したり、ビジネスパートナーの発見に活用したりすることができる。
また、技術動向の俯瞰は、M&Aをした際のシナジー効果の予測にも活用することもできる。例えば、分野が完全に重なっている場合はシナジー効果を発揮する可能性が低いのに対し、分野がある程度重複しているが重なっていない領域が比較的多い場合は、お互いの強みを生かすことができ、シナジー効果を発揮する可能性が高いと考えられる。
自社・他社の知財ポートフォリオの分析に基づき、全社戦略・事業戦略を踏まえてどのような知財を確保・強化すべきか、また、確保・強化すべき知財を、自社で創出するか、他者から獲得するかについても検討することが重要である。



 リンク集

 WIPO
国連の世界知的所有権機関のホームページです。
 特許庁
特許庁のホームページです。
 経済産業省
経済産業省のホームページです。
 最高裁判所
最高裁判所のホームページです。
 知的財産戦略本部
知的財産戦略本部のホームページです。
 文化庁
文化庁のホームページです。
 輸入差止情報
税関の輸入差止情報のホームページです。
 仲裁センター
日本知的財産仲裁センターのホームページです。


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